津山市で最初の個展を開いた私の作風をユニークと気に入り何枚も注文され若く未熟だった私を育てて下さった方から久しぶりの電話でお宅に伺った。
「90才を過ぎ身辺の整理をしている、どなたか活用して下さる方に差し上げて」と着物と帯の山 茶道に精進している若い知人用や外国で日本文化の紹介に役立ちそうな品、約20点を選ばせて頂いた。
自分で身の回りのことが充分に出来なくなったら施設に入る。
その際昼夜寝間着は嫌 昼間どなたかが面会に見えてもシャキッと着やすい部屋着で居たい とお気に入りの着物やほどいてクリーニング済みの物を出された。
お気持ちはわかる 今時簡単洋裁を引き受ける人がいるかどうか 仕方なく私が引き受けた。
何事も勉強と預かった布の安価な方から取り掛かり二着縫ってお届けした。

とても喜んで下さり少し恩返しが出来たかと一安心。
設備が整っていないと冬の藍染は無理とされていたが近年は化学的にも進歩し その上一般家庭でも空調が行き届き 真冬の藍染が可能になった。
50年前を知る者としては違和感を覚えるが若い方から藍染の相談が来た。
「わかった」とシルクに絞りを施し藍を建てて(発酵させる)染めた。
私が染を学び始めた頃は春を待ち米飯を擂り潰して藍の液に加え温度を保ち様子を見てお酒も加え経験のいる作業で難しい染だったが 今更に化学の進歩を身近に有難く感じている。

